四十七番目の導師 (中編)

◆ ◆ ◆



150年ほど前の話。

王国で勢力を持っていた三大貴族のうち、ルイ家とルフ家が結託し、ルミ家を潰そうと企んだ。
祖先を同じくする3つの家は、ルイ家が武力を、ルフ家が魔法を得意とする家柄だった。

ルミ家が得意とするのは、むしろ特異と言った方がいい、先天性の素質である。努力で培った能力を軽々と超えていく、異常とも言える能力。特性。

それを妬み、恐れ、ついに150年前、ルイ家とルフ家は謀略を実行した。
ルミ家の一族は全て、拷問の末に処刑された。

ただひとり、本家の娘が行方不明となっていた。



◆ ◆ ◆



「まず最初に、お詫び申し上げます。」

導師スーラは深々と頭を下げた。
これにはイヴィルヘイトも面食らった。

「冥王復活の儀式を行ったのは、先代の、第46代導師、紫藤遥(しどう・はるか)。」

「・・・・・・薄々わかってたわ。」

驚き顔のイヴィルジェラシーやイヴィルマリスを置いて、イヴィルヘイトは静かな声で言う。
いつになく神妙な口調と伏せた目に、イヴィルマリスも茶化せない。

「その人、きっと世界が嫌いなんでしょ。嫌悪してたんでしょ。あたしもそうだったから。わかるわ。」

「そうです。遥先輩は、その・・」

「言わなくていいわ。ここに来る女の過去なんて、どんな種類のものだかは想像ついてるわよ。虐待でも、強姦でも、戦災でも、とにかくシャレにならないことだってのは間違いないのでしょ。だったら詳しいことなんか知りたくない。」

「ありがとうございます。」

「お、お礼を言われるようなことなんか言ってないわよ!」

少し普段の調子に戻ったイヴィルヘイトは、赤くなった顔で横を向いた。
しかしすぐに冷静になって、導師スーラに向き直る。

「その人の“導師の特性”は、異世界から勇者を召喚できるってところ? それを悪用したわけね。人格的な“勇者”というものが存在しない以上、“勇者の特性”を持った者を呼び寄せる能力・・・冥王は勇者特性を持っているんだから。」

「100パーセント正解です。大したものですね。」

「悔しい! ヘイトに賢さで負けるなんて!」

「ボクも知将のお株を奪われちゃったかなー。」



◆ ◆ ◆



勇者の特性のひとつに、“死ににくい”というものがある。
肉体的に、精神的に、運命的に、何故か勇者は死から遠い。

およそ普通の人間や生物なら死ぬような怪我を負っても、細胞は活動を続ける。
諦めず、挫けず、苦難に耐え抜いて努力する。常人には無いバイタリティだ。
敵の攻撃が運よく急所を外れたり、通りかかった医者に命を救われたりする。

現在の勇者であるマーブルも、この特性の持ち主だ。
おそらくは、勇者と呼ばれる者の9割程度は、多かれ少なかれ持っている特性である。

この特性を突き詰めた先、多かれの方の最終形態がある。
それは決して死なないこと。死なずに戦い続けられることだ。



◆ ◆ ◆



「あなた方へ協力し、冥王を封印することは吝かではありません・・・が。」

導師スーラは、訊かれる前に先んじて言った。

「冥王の力は強大です。私は封印術を使うことは出来ますが、冥王と戦いながらでは術式を組むだけの集中はおぼつかないのです。」

「言いたいことはわかるわ。あたしたちに、それだけの力量があるのか、確かめたいってことよね?」

「そうです。修練場へ来てください。」



転移の魔法陣を幾つか乗り継いで、導師スーラと四天王は、だだっ広い空間へ辿り着いた。
ここでなら思いっきり戦えそうだ。

「いつでもどうぞ。」

「導師じきじきに力試しってわけね。だったらここは、あたしが行くしかないじゃない!」

話が早いのはイヴィルヘイトも同じことだ。
これが人間であれば戸惑っていただろう。魔族ならではの物分りの早さである。

「食らえっ!」

イヴィルヘイトは右手を爪牙に変形させ・・・否、元の姿に戻し、スーラに斬りかかった。
当然よけるだろうと考えていたイヴィルヘイトは、真正面から掴まれてギョッとした。

人間のものと変わらない見た目の左手が、獣の手を掴んで止めている。
びくともしない。

「嘘・・・」

「こんなものですか、あなた方の意思は。」

スーラは静かな声でイヴィルヘイトの右手を強く握り、ギガデインの術式を組んだ。

「っ!?」

掴まれているので逃げられない。
もろに稲妻を食らって、イヴィルヘイトは意識が一瞬飛んだ。

「かはっ・・」


「冥王を相手にするなら、1対1にこだわるなど愚の骨頂・・・。もしも私の身を案じているなら、余計なお世話と言っておきます。」

スーラは涼しい顔で立ち尽くす。

「私の素質・・・今風に言うと“導師の特性”は、パラメーターの上限が存在しないこと。簡潔に言うなれば、あなた方は150年ほど成長し続けた魔導師を相手にしてるということです。」




つづく

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この記事へのコメント

2013年11月18日 17:09
火剣「150年前にいたのはゴリーレッドくらいか」
ゴリーレッド「佐久間んも」
コング「大事なことは行方不明になった娘も拷問されたかってことだ」
火剣「拷問に処刑とは酷いことしやがる」
コング「拷問はいいけど処刑しちゃダメだ」
ゴリーレッド「拷問されても屈服しなかったから処刑されたのか」
コング「拷問の仕方が素人だったんだろう」
火剣「イヴィルヘイトを見直したぞ。嫌悪だけじゃなかったか」
コング「強姦?」
ゴリーレッド「そこは話を広げなくていい。ジェラシーも頑張れ」
火剣「勇者の特性。勇気ある者だけじゃないのか。死ににくい」
コング「ヘイトがやられた。強いなスーラ。マリス、チャンスだ。バトルなら体に触れるのもアリだ」
ゴリーレッド「150年ほど成長した魔導師。甘く見ないほうがいい」
火剣「スーラを倒せないようじゃ冥王も倒せないということか」
コング「マリス! 経験したことのない快感に女は弱い。一瞬で急所を決めろい!」
ゴリーレッド「膝十字固め!」
コング「痛い痛い痛い!」
ゴリーレッド「急所を決めろと言うから」
火剣「ここはパンプキンの出番と見た」





2013年11月18日 18:43
特性乱舞キター!!!冥王も導師も特性持ちという大盤振る舞い。しかし、そうか…この世界では『勇者』というものは存在しないのですね…。勇者特性を持つ者はいても、それらは導師、魔王、冥王と呼ばれるようにもなる…。真の勇者とは…。

チュルーリ「最後に生き残った奴が『勇者』じゃないかな。かかっ。」
ディルティ「人間の味方だった奴が『勇者』でしょ?」
梅花「世界の生き物の半分を救ったら多分『勇者』…。」
白龍「…。なんだろう、このモヤモヤ感は…。」
ミッド「冥王は勇者特性を極めて死ななくなったのでしょうか。となると、不死であるチュルーリ様が『勇者』!」
白龍「待ちなさい。」
ツヲ「スーラちゃん最強伝説始まりました。ちなみに行方不明の本家の娘が紫藤遥ちゃんかな?」
白龍「どうなんでしょうね?」
2013年11月18日 22:42
>火剣さん
勇者パーティーが処刑されそうになった通り、謀略や粛清は現代でも行われています。場合によっては魔法使いも拷問されていたでしょうか。
意外と賢いイヴィルヘイトですが、スーラ相手に早くもダウン。マリスも勝てるかどうか・・。もちろんスーラに勝てるようでなければ、冥王を封印することはおぼつきません。

八武「ルミ家の娘は拷問されたのかね?」
佐久間「逃げられた。」
八武「いかんな。私が保護してあげよう。」
佐久間「導師に保護された。」
八武「遅かったか・・・。」
山田「間に合ったんだよ。しかし他は処刑されてしまったか。」
八武「それで、スーラは処女かという話だが。」
佐久間「たぶん処女かな。しかし特殊なローブのせいで、性的な攻撃にも強い。」
八武「ふざけたローブだ! 誰が作ったんだ!」
佐久間「導師の長。」
山田「でかした。」
八武「だが、障害が困難であるほど燃える! マリス、さっさとローブを脱がしてしまえ!」
山田「無理じゃね。」
佐久間「確かにスーラのローブを脱がせられないようでは、冥王は倒せない。」
八武「やはりそうか。勝てないまでもローブを脱がすんだ!」
山田「その時点で負けている。」
2013年11月18日 22:58
>千花白龍さん
おそらく繰神冬未の言った通り、勇気のある者が勇者となる世界です。もちろん力が伴わなければならないのですが・・。
特性のジャンル分けは割と曖昧で、仲間の力を上げる特性などは、勇者か魔王か判断が割れています。フォズ大神官の転職スキルは、この世界だと導師の特性になるでしょうか。

山田「極めることが必ずしも良い結果になるとは限らないってことか。・・いや、何よりも心が大切だってことだな。」
佐久間「勇者に関しての意見は、それぞれ正しい。魔王が魔族の勇者であるように、冥王も・・」
山田「なに・・?」
八武「エロいのが勇者。」
山田「それは別の意味だ。」
佐久間「いや、これまた正しい。」
山田「はい?」
佐久間「近いうちにわかる。娘の正体もな。」
八武「おぢさんが保護してあげたかった。」
山田「まだ言うか。」

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