魔物使いは志す (中編)

◆ ◆ ◆



かつて勇者パーティーが、まだ3人だった頃。
魔法使いが加わる前で、攻撃魔法による全体攻撃手段に乏しかった彼らは、イヴィルヘイトの配下である魔獣たちに囲まれ、苦戦を強いられていた。
賢者の補助魔法で致命傷は免れていたが、かすり傷でも積もれば大ダメージだ。
体力も気力も底を尽きかけ、死を意識するようになったとき、彼女は現れた。
西方の国の魔物使い、名はベスラ。彼女の眼光は獣たちを怯えさせ、回復魔法は勇者たちを癒した。
しかし獣魔将軍の副官とも言えるディスライクが撤退の判断を下したのは、その背後にいる魔物たちを恐れたがゆえであった。それほどに強力な、3体。
蛇竜コアトル。鋼鉄スライムのメタルキング。そして輝かしい虹の孔雀。
異世界のモンスターマスターも使っていた、それだけで絶望を与えるモンスターパーティー。



◆ ◆ ◆



「やったか!」

コアトルの火炎吐息、メタルキングの稲妻魔法、そして虹孔雀の“マダンテ”。
策を練る間も与えず敵を殲滅する、必殺コンボ。
未だかつて、これに対抗できた相手は存在しない。今の勇者パーティーでも、ひとたまりもないだろう。

だが、相手は冥王の右腕とも言われた骸骨戦士ピルト・ダウン。
すなわち、死族のエリートなのだ。

「すっげえええええ! らざああああああああ!」

「っ・・・・あ・・・・・!?」

「今のが最終魔法“マダンテ”かあ! ピルト感激!」

今のを食らっても、死ぬどころか、体が大きくなっている。
いや、死ぬはずはないのだ。

もう死んでいるのだから。

「やるじゃん、魔物使いのベスラおばさん? でもピルトは粉々になっても復活できる、超再生能力を持ってるんだ。そのマダンテは完璧じゃない。ピルトは倒せないよ。そして・・・」

ピルトの周囲に、膨大な魔力が渦巻いていた。

「ピルトは相手の放った魔力を吸い込むことが出来るんだ。流石に“マダンテ”は吸い込め切れなかったけど、ババアとカスどもを倒すには十分なんだよお! ババア!」

「ぐっ・・・・」

「らざははは! 冗談だって、ベスラおばさん? 可愛いよ、美人だよ。」

態度がコロコロ変わる。
苛立ちと恐怖がベスラを翻弄する。

「まあ全て冗談なんだ。だって生きてる奴は、それだけで駄目だからな。これも冗談なんだけど。」

口の減らないピルトの腕に、再び上空から降ってきた杖が収まる。
上空に何かあるのかと、ベスラは気になったが、それを察したようにピルトは笑う。

「何も無いよ。冥界との入口が少し上空にあるだけだ。冥王復活まで、おばさんと勇者たちを会わせるわけにはいかないからね。あ、様つけんの忘れた。ま、いっか、ピルトそういうのこだわらない方だし。」

「・・・何故あたしと勇者を会わせるわけにはいかないと?」

薄々わかっているが、わからないフリをして訊いてみた。

「あれ、わかってない? ピルトがっかり。」

「あたしの回復魔法と、魔物を従える力。それを組み合わせれば、魔王が全盛期の力に戻れて、壊れかけた封印を張り直せるだけの力が戻るから・・・とか?」

「わかってんじゃん。流石だね、魔物使いのベスラおばさん。」

この胡乱な骸骨を信用するわけではないが、推測が確信に変わるには十分だった。
ベスラは、あらためて自分の重要性を知った。

魔物たちから、かつて魔王が冥王を封印した経緯を聞いたときから、ひとつの思いが彼女の中にあった。
もしも自分が生きてる間に冥王の封印が緩むようなことがあれば、魔王と手を組んででも冥王を封印せねばならない。それほどまでに、冥王は恐ろしい。直接知らぬ魔物さえも、夜も眠れぬほど怯えるのだから。


「らざあああ! それだ、その意志だ。その意志あってこそ、殺すのが楽しい! 生きてるって、意志があるってことだからなあ! 悔しかろう? 志半ばで死ぬのはさ。」

「死ぬものか・・・・・・あたしは死なない!」

「らざははははは! 粉々になっても再生するピルトに勝てるとでも? あ、もちろん逃がさないからなあ! 死の踊りは、逃げる意志を許さない! わひひひひ!」

ピルトに蓄えられた魔力が、魔法に変わる。

暴風と稲妻がベスラと魔物たちを襲った。





つづく

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この記事へのコメント

2013年11月27日 20:11
火剣「強敵だな、骸骨戦士ピルト・ダウン」
コング「鋼鉄スライム?」
ゴリーレッド「いちいち反応しなくていい」
火剣「死族のエリート。すでに死んでるから死なないか。どうすればいい?」
コング「らざあああ!」
ゴリーレッド「冗談か本気かわからない男だ」
コング「らざははは」
火剣「おばさんと言ったりババアと言ったり挑発しやがる」
コング「わひひひ」
ゴリーレッド「会話に参加する気がないなら月まで飛ばそうか?」
火剣「勇者と会わせるわけにはいかない。これはどこまで本音なのか」
コング「冥王ってそんなに凄いのか。そこまで言われると会ってみたくなるな」
火剣「ゴリーレッドか」
ゴリーレッド「ん?」
コング「ピルト・ダウンにも必ず弱点があるはずだ。ドエス魔人にも弱点があるように」
火剣「今のところ弱点が見当たらない」
コング「良い子のみんな。ドエス魔人に捕まったときは、あっはん、うっふん、抱いてと言ったら泣きながら退散することは知ってるね?」
ゴリーレッド「フライングニールキック!」
コング「どおおお!」
火剣「ちなみに八武医者にそれをやったら犯される」




2013年11月27日 23:13
>火剣さん
ただでさえ不死なのに、強烈な能力と強烈なキャラ。かなりの強敵です。これで冥王が完全復活すれば、手が付けられない相手になるでしょう。
ベスラはピルトの弱点を見抜けるか・・・?

八武「やはりスライムは服を溶かすタイプが至高。」
佐久間「それが死根也の嗜好。どんな色気も受け入れるストライクゾーンの広さ。」
山田「どういう思考だ。」
八武「水平思考。みんな違ってみんなイイ。」
佐久間「金子みすずか?」
山田「しかしマダンテも通用しないとは・・・。粉々になっても復活できるって反則すぎる。佐久間かよ。」
佐久間「流石に私も粉々になったら死ぬってば。」
八武「バラバラにしたスライムが少女の体内に入って媚薬を生成する話をしようではないか。」
山田「それよりベスラが勝つ方法を考えよう。粉々で駄目なら、燃やし尽くすか。」
佐久間「コアトルの火焔も通用してないから、それは難しい。」
八武「じゃあ、突如としてベスラが若返るというのは?」
山田「やかましい。ピルトを倒せ。」
八武「スライムと戯れて若返る老女の話をしようじゃないか。」
佐久間「そんな話どこで仕入れてくるんだ?」
八武「ネットの海は広いんだよ。ヒロインだよ。」
山田「死根也も弱点が見当たらない。」
佐久間「悪い大人だからな。」
八武「良い子は私のところへおいで。悪い子にしてあげる。」
2013年11月27日 23:56
白龍「ピルトにホイミ。」
ツヲ「らざああああああああ!って叫び声を上げて消滅しそうだね。死なないなら回復が弱点。ゾンビ系が回復や聖属性攻撃に弱いのと一緒。」
白龍「もしくはあの杖が本体で死なないことを演出しているのかも。」
ツヲ「封印という手もあるね。」
白龍「どんどん試していきましょう。こいつを倒せれば死族との戦いも楽になるでしょう。」
2013年11月28日 00:06
>千花白龍さん
そうそう、ゾーマには回復呪文がダメージになるという・・・。「ダイの大冒険」でのマホイミと対を成している感じでしょうか。
しかし杖が本体って、それって魔法少女オブ・ジ・エンドwwww

佐久間「そう、封印は通用するし、他にも通用する技はある。」
山田「いっそベホマでも使ってやろうぜ。」
佐久間「確かにベスラは、ベホマもベホマズンも使える。」
山田「打つ手が無いと思っていたが、意外と突破口はあるのか?」
佐久間「まあ、死なないというのは、どういう意味なのかという、ね・・。」

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