佐久間と山田のけだるい日常 第七十四話 ~転換~(後編)

「聞こえなかったのか? お前の妻をレイプすると言ったんだ。お前の妻、ミガロス99号を。」
佐久間闇市は、せせら笑いながら八武に向かって宣言した。
「待ちたまえ。女なら私が他に調達しよう。」
「おいおい死根也、お前にとって女は物資か?」
レイプ宣言してる人間が言うセリフではなかった。
「あァ、それとも竜太郎の妻を差し出すって意味か?」
「それも違う。」
「じゃあ、この病院の美人揃いのナースたちか。」
「・・・・・・。」
八武の額に汗が光る。
以前から、佐久間が下品なままなのなら、いっそ男に生まれてればと考えたことはあった。
しかし、ここまで酷いとは。今すぐ女に戻ってほしいと、八武は切に願った。
「ナースたちを食い尽くせば、流石に俺もスッキリするだろう。」
かつて傭兵として活動していたときに、部下全員の性欲処理を自らの体ひとつで引き受けた、底無しの性欲。
それが男になったときに、そのまま残存する。この恐怖。まったく、どこから精液は補充されているのか。

「いや・・・いっそ、お前でもいいか。」
「え!? き、聞こえませんでした!」
八武の顔が、いよいよ土気色になる。
その顎をクイッと持ち上げて、佐久間は笑う。
「男にも穴はあるだろう?」
「ま、待て、待ちたまえ、男をレイプしたくなくなったのではないのかね! それで診察を受けに来たはずだ!」
「そんなこと誰が言ったんだよ。お前の妄想じゃないのか?」
「んなわけあるかぁ! 自分で言ったことを忘れんな!」
「・・・ん、ああ、そんなことを言ったかもしれん。だが、気分が変わったんだ。」
「いい、いいから落ち着きたまえ。逆の立場で考えてみるんだ。感覚も男になったのなら、男に犯される恐怖も理解できているはずだ!」
「別に俺が受けでもいいぞ。診察を受けに来たわけだし。」
「やめろおおお!! 女のときは同性愛の趣味は無いのに! 何で男になったら男も対象内なんだよ!?」
「そんな小難しい話、どうでもいいよ。そこに穴があれば、突っ込むしかあるまい?」
「待て、落ち着け。人間に転生してからは、男になるのは初めてじゃないのかね!?」
「そうだけど、それがどうかしたのか。」
「ならば! 男になってからの初めての男は、山田で然るべきだ!」
「・・・なるほど、一理ある。」
「だろう!? だから早く、山田を犯しに行け! 一刻も早く!」
「保身の為なら友人を犠牲にすることも厭わない、その精神。感服したぞ。」
嫌な言葉を残し、佐久間は去っていった。
残された八武は、安堵しつつ、2人の獲物を手に入れてプラス収支だと考え始めていた。


- - - - - -


「というわけなんだ、山田。これからレイプを開始する。」
家に帰ってきた佐久間は、これまでの経緯を山田に語った。
山田は八武に猛烈な殺意を覚えると同時に、目の前の男にかつてない恐怖を覚えた。
それは、生理的な恐怖。
戦うべきか、逃げるべきか、話を試みるべきか。
「・・・佐久間。俺は同性愛に偏見は無いつもりだが、同性愛者でない者の意思も尊重してくれ。頼む。」
「そうか。ならばミッドナイトブリス!」
「なっ・・・!?」
デミトリ・マキシモフの技、ミッドナイトブリス。これを食らった者は、女でなければ女になってしまうのだ。
山田も例外ではない。ぶかぶかのシャツとズボンが下着ごとズリ落ちて、あられもない姿の少女が出現した。
「とにかくレイプをしたい! とにかく山田をレイプしたいぞおおおお!!」
佐久間の蹴りが山田の華奢な肢体に直撃する。
「くぶっ・・!?」
壁に吹っ飛んで激突した山田は、しかしミッドナイトブリスの効力が切れて男に戻った。
筋骨隆々の逞しい肉体、それこそ今の佐久間よりもゴツゴツした裸体が惜しみなく晒された。
「もう効力が切れるとは・・・。まだまだ俺も修行が足りないな。だが、おかげで良いものが見れた。自分から脱いでくれるとは、俺に抱かれたくなったか?」
「お前が脱がしたんだろうが!」
山田、怒りのラリアット。
しかし佐久間はスウェーバックして衝撃を和らげる。
(・・・くそっ、こうなったら禁断の技を使うしかない!)
山田は覚悟を決めた。
徒手空拳で佐久間と戦いながら、山田はチャンスを窺う。
「ふーむ、男の体も悪くない。体術だけで山田と互角に戦えるとは・・・っと、それでも、ちと不利か。」
体重では負けている。ぶつかり合ったときに、押される度合いが違う。
そして。

カキーン☆

山田は確かに、そんな音を聞いた。脳内で響いた。マンガの読みすぎか、痛みの共感か。
ともかく山田は、男として禁じ手を使ってしまった。冷汗が迸る。
「う・・・ぉおお・・・・・うぐぁ・・・・おうっ・・・・・・」
佐久間は冷汗どころではない。
脂汗を滲ませながら、前かがみになって苦しんでいる。
山田は渾身の力を込めて、両手を組んで振り下ろした。

ガツン☆

全ては終わった。
佐久間闇市は気を失い、耳から青白い煙が果てしなく立ち昇ってきた。
吸い込むと危険そうなので、しばらく山田は外出することにした。もちろん、服を着てから。




   第七十四話   了

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2014年08月27日 20:32
火剣「保身のために大切な病院の要であるナースを差し出すとは」
コング「ぐふふふ。部下の妻に、友人の山田太郎も躊躇なく差し出す。これぞ八武院長」
ゴリーレッド「緊急避難か」
火剣「そんな危険な目に遭いながらも2人の獲物とか言ってる」
コング「八武院長の辞書にブーメラン現象の文字はない。♪ブーメラン、ブーメラン、ブーメラン、ブーメラン、きっと!」
ゴリーレッド「800文字」
コング「あなたーは、戻ってくるだろう!」
火剣「佐久間闇市は戻って来ないほうがいいだろう」
コング「なるほど、山田太郎のままじゃアレだから、少女にしてから犯すという技があったのか」
火剣「簡単に男に戻った」
ゴリーレッド「やはり佐久間んを止めることができるのは山田殿だけか」
コング「佐久間闇市が美人揃いのナースを全部食うシーンも見たかった」
ゴリーレッド「三原則に反する」
コング「なぜだ?」
火剣「うろつき童子に出てくる妖怪も快感が強烈過ぎて、犯された女はみんな死んでしまった。佐久間闇市もそんな感じだ」
コング「なるほど、それはかわいそうだ。でも『昇天=逝く』となると、いよいよの時に慌てふためくから興奮度は高いが」
ゴリーレッド「何か言ったか?」
コング「独り言だ。犯しても殺すな」
ゴリーレッド「犯すのもダメなんだバカ」
2014年08月27日 21:47
山田さんは八武さんの犠牲になったのだ…。

>「保身の為なら友人を犠牲にすることも厭わない、その精神。感服したぞ。」
>嫌な言葉を残し、佐久間は去っていった。

何だか酷い。酷い会話の応酬。そして、最終的に八武さんはプラス収支って…全然懲りてない!
山田さんもとんだ災難でしたが、男になった佐久間さんはその弱点を知らなかった…。不慣れな体だと戦いにくい、ギニュー隊長みたいな敗北の仕方。やっぱり自分に一番合うのは元々の体ってことですね。
で、次の話になった時、元に戻ってるのだろうか…。闇市さんのままの可能性もあったりして…。
2014年08月27日 22:23
>火剣さん
流石にナースや部下の妻を差し出すのは憚られたようですが、友人は別という。女に優しく(やらしく)、男に優しくないドクターです。
かつてない恐怖を与えてくれた佐久間闇市。どうにか止められましたが、また次なる問題が・・・?

佐久間「まったく、酷い目に遭った。」
山田「俺と死根也のセリフだ!」
佐久間「あの痛みを味わったら、しばらく男にはなりたくない。」
維澄「コングの要望に答える気は無いの?」
八武「やめたまえ。頼むから。」
山田「死根也の喜びそうなシチュエーションだと思うが。」
佐久間「まあ、それは男になったときに考える。女のときは女にムラムラしないしな・・。」
維澄「それは残念だ。」
佐久間「そう言えば、どこから女を調達するつもりだったんだ?」
八武「そのへんから攫ってこようと思っていた。」
山田「ドエスアクマンかっ!」
八武「あるいは、患者を改造手術で美女にするとか。」
維澄「ミッドナイトブリスSF版?」
山田「どいつもこいつもイカれてやがる。」
八武「イカされて昇天?」
佐久間「人間は闇の力に弱いからなぁ。」
山田「他人事のように・・・。」
佐久間「もちろん私も例外じゃない。」
山田「そういう意味じゃない。」
八武「コングの要望は私が実現しよう。」
山田「お前も闇市と同じじゃねえか!」
八武「安心しろ、死なないように注意する。」
佐久間「私も注意してたんだが。」
八武「いや、お前はしてない。」
2014年08月27日 22:42
>千花白龍さん
闇市が酷いのは言うまでもないですが、ドクターも相当ですね。
レイプの恐怖を味わったものの、結果的に獲物を手に入れてほくそ笑むドクター。やはり山田さんの1人損。いつものこととはいえ・・・。
記憶喪失のときも、意識と肉体の乖離から疲弊していましたが、似たようなものですね。ギニュー隊長ほどには弱体化しませんが、バランス的には普段の体格が丁度いいようです。

山田「友情って何だろう。」
八武「それは信じ合うこと。きっと君なら佐久間を止めてくれると信じていたよ。」
山田「嘘くせえ・・。まあ実際、止めたけど。」
維澄「慣れない体でも、いつもよりは力はあるの?」
佐久間「いや、リーチが長いから。」
維澄「ああ・・。」
八武「何だかんだで体術では山田が頭ひとつ出ている。私の戦闘力は剄に頼るところが大きいからね。」

この記事へのトラックバック

2019年11月
               1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

過去ログ

テーマ別記事

最近の記事

最近のコメント

QRコード