亡霊たちへの鎮魂歌 70

白石楷は、知らない祖父を思い出していた。
花咲瞭は、知らない戦場を思い出していた。
唄には、知らないことを思い出させる力があった。

   誰が 誰が 永遠の安息を与えてくれるの
   深い淵へ堕ちた魂を掬い上げてくれるの
   死者は眠ることさえ許されず
   苦しみと 怒りと 嘆きが聞こえる
   この愚かなる戦いが終わるまで!
   この愚かなる戦いが終わるまで!

宮白希揃は、世界が広がるのを感じた。
自分が悩んでいる間にも、人は死ぬ。

   現世は遥か遠く 肉体を離れた魂は
   地獄の炎に繰り返し灼かれ
   鬼たちに砕かれる
   彼らの叫びが聞こえぬか?
   彼らの嘆きが聞こえぬか?
   勇士は死して 真実を知る

白石楷の母親は、ただ耳を傾けていた。
他のことは考えず、真っ白な心で聴いていた。

   なぜ気付かない? 勇気だけでは死するのみ
   なぜ気付かない? 自由だけでは束縛と同じ
   誰か 誰か 人に光を与えてください
   最も聖なる道を示して
   人々を導いて下さい

蛹田蛭巳の双眸から、大粒の涙がこぼれていた。
彼は、自分が泣いていることにも気付かなかった。

   全ての心あるもの 全ての意思あるもの
   生きているものは光を求め
   いつの日か勝利し 罪を洗い流す
   死者は思いだけしか残せない
   憎悪と 苦痛が この世に伝わる
   この戦いを終わらせたいという願いと共に!

黒月真由良は、再び幻想の世界へ旅立っていた。
冷たく淫らな微笑みが、幼い顔を大人にさせる。

   誰が 誰が 救いの光を与えてくれるの
   人々を幸せに導いてくれるの
   死者は思いだけしか残せない
   憎悪と 苦痛が この世に伝わる
   この戦いを終わらせたいという叫びと共に!
   この戦いを終わらせたいという叫びと共に!

   誰が 誰が 永遠の安息を与えてくれるの
   深い淵へ堕ちた魂を掬い上げてくれるの
   死者は眠ることさえ許されず
   苦しみと 怒りと 嘆きが聞こえる
   この愚かなる戦いが終わるまで!
   この愚かなる戦いが終わるまで!



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この記事へのコメント

2014年11月10日 18:02
火剣「蛹田蛭巳中佐の涙が重い」
コング「うーん、ギャグを飛ばせる空気ではない」
ゴリーレッド「飛ばさなくていい」
火剣「真由良は冷たい淫らな微笑みを浮かべたら、中佐が気づく」
コング「大粒の涙で見えないか、残念」
ゴリーレッド「何が残念が聞こうか?」
コング「独り言」
火剣「とにかく悲しい哀しい歌だ」
ゴリーレッド「大河ドラマで秀吉は『戦のない世』を目指して戦で天下統一を果たすが、それではダメなんだ。秀吉死すの一報と共に、再び戦乱の世になる。平和のために戦争の準備をしたら平和は永遠に来ない」
火剣「歌詞にもあるように、誰が導く」
ゴリーレッド「どんな優れた大指導者がいても、民衆が指導者と権力者の区別もつかないようでは、どうにもならない」
火剣「三流のぼんくらを時代の寵児や救世主のように崇めたてまつる愚を見ると、世界よ滅びろと呆れる者も出てくるだろう」
ゴリーレッド「皆のやる気を奪うのが魔の常套手段だから諦めてはいけない」
コング「待とう。一番重要なシーンは真由良の冷たく淫らな微笑みだ」
ゴリーレッド「・・・否定はしないが」
火剣「歌の心に答えはない。この中では蛹田中佐は一番心を動かされるのは当然のことだろう」
2014年11月10日 22:30
>火剣さん
蛹田蛭巳の青春は、戦乱の時代でした。日露戦争の年に生まれ、少年時代は第一次世界大戦、それ以降もキナ臭い情勢の中で生きてきた人間。彼の目から見て、戦後の日本はどう映っているでしょうか。懲りもせずに戦争へ向かおうとする世の中を見て、失意や絶望を味わったことも1度や2度ではなく・・・。

維澄「こんな世界は滅びてしまえと、私も何度も思ったことがある。素晴らしいものに触れる度に、その気持ちは和らぐのだけれども、どん底の精神状態を思い出すと、素晴らしい気分のときに全て滅んでしまえば幸せだと・・・たまに思ったりする。」
八武「そうか、真由良の冷たく淫らな笑みには、そういう感情も含まれているのか。何故この場面でその表情なのかと思ったが、なるほど。」
山田「平和の為の戦争は存在しない。平和とは、戦争なんて安易な方法で手に入るほど甘いものじゃない。戦争を起こそうとする力が、戦いを起こすことも出来ないほどの、圧倒的多数の圧倒的団結。これしかない。」
佐久間「戦争を肯定するなら、最前線に立つのが最低条件だ。最前線で戦ってきても、平和を勝ち取ったと威張る奴は駄目だ。『誰のおかげで平和があると思ってるんだ』などと言う奴が権力を持ってる社会を、平和とは言わない。」
神邪「人によって、平和の線引きが全然違いますよね。『日本は平和だ』なんて物言いを聞く度に、胸がズキズキ痛みます。」
八武「真由良も胸を痛めているだろう。」

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