屍の街 10

突如として竜巻が巻き起こった。
それを皮切りに次々と爆炎が噴き出し、こちらへ向かってくる。
「ぬああああ!?」
八武は驚き、いきり立った逸物を両手で抱えながら走り出した。危険なので真似してはいけない。
「あれは何だ!?」
山田も逃げながら、その中心を見据えようとする。誰かがいるようだが、はっきりとは確認できない。
すると、一緒に逃げている円窓が言った。
「筒子さん、暴走してる・・・!」
「なんだと!?」
「筒子さんを泣かせたら駄目なのよ。」
撃針も走りながら言う。
円窓ともども、蒼白の様相だ。
「走り出したら、もう誰にも止められないわ。周囲を破壊し続けながら、体力が尽きるまで終わらない。」
「撃針、逃げ切れる? 疲れちゃったんだけど!」
「無理ね。察知するのが遅かったわ。闇子を食らおうとして、ミクモウの精神に蝕まれたのね。」
「おい、なんか聞き捨てならないセリフが聞こえてきたぞ!?」
山田にとっては、子供が不発弾を弄って大事になった過程を聞いてるようなものだった。
「うむ、闇子に触れるべからずだ。奴は簡単に世界を滅ぼしてしまえるからねぃ!」
「まったく、いつもいつも傍迷惑な怪物だ!」
山田は唾と共に吐き捨てた。

「そんなこと言ってると、助けてやらないぞ。」
内臓の大破した佐久間闇子が、道の先にいた。

「・・・いや、お前が助けを必要としてそうなんだが。」
「うむ、治療してやろうか?」
「心配無用、だがありがとう! 私には第二形態がある!」
すると闇子の全身が丸く膨らみ、ふさふさと白い毛が生えてきた。
手足は縮こまり、目玉は大きくなり、顔面も人間でなくなった。
「どうだ、可愛いだろう!」
(愛くるしいようで、微妙に気持ち悪いねぃ・・・。)
八武は思ったが、口には出さなかった。
だいたい今の彼は、全裸に白衣を羽織っただけの、他人に言及できない恰好である。
「そうか、その形態があったな。」
「知ってるのかね、山田くん?」
「ああ。その形態は、あらゆる攻撃を受け付けない。その代わりに、いかなる攻撃手段も有してないが。」
「十分だ。あれで食い止めれば逃げ切れる!」



- - - - - -



「・・・で、逃げられたと。」
数時間後、闇子の前には、山田と八武の2人しかいなかった。
「すまん。逃げるのに精一杯で。」
「いついなくなったのか見当もつかないねぃ。」
「まあいい。私も筒子を取り逃がしたし、大きなことは言えん。今日のところは痛み分けだ。」
あちこち服が破れ、下着や肌が見えている闇子は、疲れた顔で座り込んだ。
「すまないな、一族の宿命に付き合わせて。」
「「・・・っ」」
これほど殊勝な態度の闇子は、滅多に見られない。思わず蒼白になった。
しかし山田と八武の口からは、「いいってことよ」などというセリフは出てこない。
「そういうセリフは、K介とQ介のときに言ってほしかったな。」
「謝る気持ちは、体で示してもらいたいねぃ。」
いきり立った八武は、今すぐにでも闇子を犯そうとしていた。
次の瞬間、彼の股間に激痛がスパークした・・・。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

痛みで朦朧としていく意識の中で、八武の脳裏に、あの街のことが浮かんでいた。
あの死んだような街を、いつか蘇らせたい。医者としての使命感が、消えゆく意識に刻まれた。





   屍の街   完

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