傀儡師は夜に眠らない 3

「では、遠慮なく。」
彼はグイッとジョッキを傾け、一気に半分ほども飲んでしまいました。その豪快な飲みっぷりに、わたくしはますます彼が気に入りました。
「名前、なんていうんだ?」
「ギル・パイアー。人形師です。」
そう言って彼は、黒い箱を開けました。何の箱だろうと思っていましたが、中に入っていたのは3体の人形でした。
道化師を模したような姿で、服の色はバラバラでした。
赤い人形は目つきが鋭く、歯も尖っています。
青い人形は垂れ目がちで、何だか哀しそう。
黄色の人形は丸々とした目で遠くを見ていました。
「ボクが作った人形です。赤い道化師には、怒りと、憎しみと、殺意を。青い道化師には、哀しみと、苦しみと、絶望を。黄色い道化師には、浪漫と狂気を。」
「面白いな。実に興味深い。」
わたくしは熱っぽい眼差しで、彼を見つめました。
「人形も、お前も。」
「・・・・・・!」
彼は少し驚いたような顔で固まっていました。
急ぎすぎたかと思いましたが、わたくしがそういう男であるということは、たとえ冗談半分であろうとも早めに告げておくのが正解でしょう。彼にとっても、わたくしにとっても。
そう考えているうちに、彼の表情は変化していきました。驚きから、喜びの混じったような笑みに。どこかシニカルな雰囲気を纏っているのは、彼特有のものでした。
「・・・アナタ、名前は?」
彼は黒水晶のような瞳を妖しく光らせて、肉食獣のような表情で尋ねてきました。
きっとそのとき、わたくしも同じような顔をしていたと思います。
「アモン・ガゴルグ。石切り場で働いている。」
「近くのですか?」
「ああ。ここへ着て2年になるかな。」
「その前は。」
「魔界。」
「ブッ!」
今しがた口に入ったビールが、彼の口から吹きこぼれました。
「ゲホゲホッ・・・!」
「おお、悪リィ。まさかウケるとは思わなかった。」
「ううんっ・・・それで、本当のところは?」
「さてなあ。道端に捨てられた記憶はあるんだが、何しろ生まれたてだ。覚えてんのはそれだけだ。」

その後も彼との会話は続き、気が付けば明け方になっていました。
「しばらく、ここに居んのか?」
「そうですね。ここは良い街です。人形たちにとっても・・・。」
後になって考えれば、このときの彼の言葉は重要な意味を持っていたのです。



つづく

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