決闘祭!   Act 231 リンネの左手、ゾークの右手(ⅩⅩⅠ)

◆ ◆ ◆



私とリンネの関係は、どのように言うべきかなァ?

“始まりの1枚”の裏表。
神と悪魔。
一と全。
姉と妹。
母と娘。
あるいは恋人。
あるいはデュエルの相手。

私はリンネの分身であり妹であり姉であり娘であり母であり父であり兄であり弟であり友人であり恋人であり奴隷であり主人であり味方であり敵であり相談相手であり好敵手であり真理を探究する仲間。

とても言い表しきれないよ。
だけど今の状況に則して言うなら、原作者と二次作家ってところかな。
リンネが紡いだ世界を、私が記憶し、記録し、写し取り、続きを想像する。
具体的な想像は現実になる。私の“敵対の力”は、具体的な想像を現実化する。
なんて素敵な力。ずっと遊べる力。リンネに楽しんでもらう為の力。

私が紡いだ世界を、リンネは記憶し、考察し、類推し、参考にする。
そうやって新しい世界が次々と生まれていく。
この頃はリンネも私も、きっと誰にも無害な存在だった。
宇宙が自然に滅びるまで、のんびりと待って、それが楽しくて。

気付かなかった。それが永遠でないことを。
知らない振りをした。有限の海を。
目を逸らした。リンネの孤独から。

リンネの孤独なんて、君たち如きに分かりっこないけど、この喩えなら少しは分かるかなァ?
たくさんの物語に触れるほどに、過去最高の感動を更新することは、難しくなっていく。
誰も退屈からは逃れられない。たとえ神様であってもね。

いや、いや、いや、神様“だけ”は、だよ?

だって人間は死ねるから、いつでも退屈から逃げられる。
最高の感動を更新し続ける、いっとう冴えた方法を知ってる?
それは記憶を消去し続けることだって、知ってるよね?

天神美月は、そうしてきた。
みずからの記憶を消すことを望んで、神様を置き去りにして、新しい人生を何度でも何度でも何度でも!
その度に運命の出会いを、世界の命運が懸かったデュエルで、最高の昂揚を、悲劇的な別れを!
リンネや私にとっては見飽きた光景を、何度だって最高の鮮度で味わってきたんだ!

このゲームは、喜びも悲しみも贅沢に味わい続けた美月への、ちょっとした嫌がらせも兼ねていたり?
みゃはは、私だって美月のことを悪く言う資格なんて全然ないっていうのにね!
決して記憶を消すことが出来ないリンネと違って、私は何度だって記憶をリセット出来るし、消したくない部分は都合よく残して、嫌な記憶だけを質量として食べてしまえるんだから!

だから私は、ずっと楽しい。
だから私はリンネの孤独に、ずっと気付かなかった。



◆ ◆ ◆



「魔王ザミエルよ、狩人の焦燥に、ひとときの慈悲を! “フレイムウェーバー”!!」

「おいでなさいませ隕石さんたち、狩り尽くして差し上げますわ!」

軽装スカートの少年と、死神のコスプレをした少女が、隕石を砕いていく。
闇が天空を覆う中、魔術師たちの駆動は、日月星のように輝いている。

「ヒノエ、ミゾレ、無理すんなよ!」

「大丈夫ダヨ、マサキ。」
「まだまだ行けますわ、ローズ様!」

言葉だけは威勢が良いが、顔には疲労が浮かんでいる。

「・・・・・・」

大河柾は地下都市の戦いを思い出していた。
あのときも、この姉弟は自分と共に戦ってくれた。
無理するなと言っても、無理な話だ。

「泣笠、戦況はどうなってる?」

「はっきり言って悪いわ。降り続けている隕石は、徐々に大きさを増している。今では恒星ほどのサイズよ。」

夜の帳に黒い本、片手に携えた泣笠葉継。
かつてない焦燥を、汗と共に浮かべている。

「薫さんの飛ばしている《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》が、自動迎撃で消し飛ばしているから、しばらくは何とかなりそうではあるけど、問題は・・・」

「放射能か。」

彼の回答に、泣笠は頷いた。

「海馬コーポレーションとインダストリアルイリュージョン社が、急ピッチで《闇の世界》を量産しているけれど、恒星の持つエネルギーは文字通りに桁が違うわ。今はまだ地球を闇の加護で覆えているけれど、均衡は確実に私たちに不利な側に傾きつつある。《ブラック・ホール》を解除したのは、温存ではなく、窮余の策よ。」

“白夜の力”で細く糸状にした《ブラック・ホール》で地球を覆うことで、隕石を食い止めていたはずだが、いつの間にか解除されており、隕石の“欠片”―――欠片といっても恐竜を滅ぼした程度のサイズは有にある―――が、絶え間なく無数に降り注いでいる。

薫は決して最高の力を持ってはいない。
だが、“白夜の力”の扱いに関しては“最巧”だ。
それゆえに、彼女以外の魔術師に同じことは出来ない。
出来たとしても、効率が絶望的だ。

「シンヤ・・・」

思わず親友の名前が口から洩れた。
どこかで彼に、呼びかけられている気がする。



「見つけましたよ、大河柾さん。」



そして、闇からの呼び声を聞きつけているのは、呼びかけられたマサキだけではない。
竜堂神邪と兄弟のように似た容姿を持ち、その魂までも程近い男が、敵意を纏って現れた。

「竜堂神邪は、どこですか?」

冗談の通じる雰囲気ではない。
それは伴っている面々の顔ぶれからしても明らかだ。

ギャシュリー・クラムの娘、浜百合氷澄。
竜堂神邪に孕まされ、全ての卵子を消耗させられた女。

元おとなPTA所属の決闘教師、蒼乃削減。
竜堂神邪に子供を殺され、性奴隷にされていた女。

公式レベル5能力者の一人、括屋束。
竜堂神邪に直接の怨みは無いにしろ、蒼乃を恋人にしている男。

“タイヨウの騎士”サン・レイティアと、“月影の騎士”アリアン・ロッド。
それぞれに守るべき存在を持ち、その正義も倫理も竜堂神邪と相容れない。

「シンヤが何処って、俺の方が知りたいぜ。」

「質問を変えましょう。あなたが竜堂神邪に最後に会った場所と時間、そして何を話したかを教えてください。」

「それを知って何しようってんだ? シンヤを殺そうってのか?」

「はい。」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

肩を竦めて困り顔のマサキと、真剣な顔で見据えるモリン・モリン。
表情と内心は、むしろ逆だ。

「カノンに屈した負け犬どもが、雁首揃えて俺の親友を討伐しに来やがったってわけか。泣笠、こいつらを呼んだのは、もしかしなくても・・・」

「ええ、私よ。」

「そっか。」

マサキは疲れた顔で、天を仰いだ。
目を瞑り、それでも悲痛が溢れ出す。



「出番だぜ、アルド。」



見開いた眼は、怒りと嗜虐に彩られていた。

それは既に、気怠く濁った少女の眼になっていた。


「つまり要するに珍札狩郎が鼻水でエクゾディアの腕を張り合わせるが如くカノンはボクとマサキを張り合わせたから一蓮托生になってしまったんだけど・・・悪魔の、ゲームは、ホント、人類社会の、縮図だ。暴力的で、ぐだぐだで、よってたかって、生贄を、捧げて、幸せになる。ね。」

少女の左手は、甲から禍々しい三本爪が生えている。

「だから要するにボクは言いたいわけさ・・・もっと、シンプルに、行こうじゃ、ない、か。」

「マサキさん、あなたは―――」

「君の相手はボクだよモリン・モリンこっち向いてよ決闘者・・・どうせ君は、遅かれ早かれ、ボクと、戦うことを、選ぶはず、だから。ね。」

「そうですね。挑まれたデュエルは受けて立ちます。」

「うんうん実に良いシンプルさ・・・好きだな、そういうの。」

怒りに満ちていた眼が、決闘者として収斂する。
それこそ本当に恐ろしく、こんな状況なのに昂揚してしまう眼だ。
モリン・モリンも気が付けば、同じ顔をしていた。


「「デュエル!」」


永遠アルド:LP8000
モリン・モリン:8000



「だけど実際しかしデュエルは無味乾燥に決着するから昂揚に反して面白くもなんともないよ。」


モリン・モリンのデッキは消えていた。


「え・・・・・・?」


デュエルが始まる前から敗北を強いられたら、誰でも呆然とする。

現実味の無い顔で、事態を呑み込めていない彼に、アルドは告げた。



「全てを消し去る力、それがボクの“裂く死ぬ世界”(ノットワールド)だ。」



“裂く死ぬ世界”(ノットワールド) レベルイマジナリー能力(所有者:永遠アルド)
フィールの及ぶ範囲を任意選択して消去する。








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