決闘祭!   Act 232 リンネの左手、ゾークの右手(ⅩⅩⅡ)

◆ ◆ ◆



私とリンネの関係は、どのように言うべきかなァ?

“始まりの1枚”の裏表。
神と悪魔。
一と全。
姉と妹。
母と娘。
あるいは恋人。
あるいはデュエルの相手。

私はリンネの分身であり妹であり姉であり娘であり母であり父であり兄であり弟であり友人であり恋人であり奴隷であり主人であり味方であり敵であり相談相手であり好敵手であり真理を探究する仲間。

とても言い表しきれないよ。
だけど今の状況に則して言うなら、原作者と二次作家ってところかな。
リンネが紡いだ世界を、私が記憶し、記録し、写し取り、続きを想像する。
具体的な想像は現実になる。私の“敵対の力”は、具体的な想像を現実化する。
なんて素敵な力。ずっと遊べる力。リンネに楽しんでもらう為の力。

私が紡いだ世界を、リンネは記憶し、考察し、類推し、参考にする。
そうやって新しい世界が次々と生まれていく。
この頃はリンネも私も、きっと誰にも無害な存在だった。
宇宙が自然に滅びるまで、のんびりと待って、それが楽しくて。

気付かなかった。それが永遠でないことを。
知らない振りをした。有限の海を。
目を逸らした。リンネの孤独から。

リンネの孤独なんて、君たち如きに分かりっこないけど、この喩えなら少しは分かるかなァ?
たくさんの物語に触れるほどに、過去最高の感動を更新することは、難しくなっていく。
誰も退屈からは逃れられない。たとえ神様であってもね。

いや、いや、いや、神様“だけ”は、だよ?

だって人間は死ねるから、いつでも退屈から逃げられる。
最高の感動を更新し続ける、いっとう冴えた方法を知ってる?
それは記憶を消去し続けることだって、知ってるよね?

天神美月は、そうしてきた。
みずからの記憶を消すことを望んで、神様を置き去りにして、新しい人生を何度でも何度でも何度でも!
その度に運命の出会いを、世界の命運が懸かったデュエルで、最高の昂揚を、悲劇的な別れを!
リンネや私にとっては見飽きた光景を、何度だって最高の鮮度で味わってきたんだ!

このゲームは、喜びも悲しみも贅沢に味わい続けた美月への、ちょっとした嫌がらせも兼ねていたり?
みゃはは、私だって美月のことを悪く言う資格なんて全然ないっていうのにね!
決して記憶を消すことが出来ないリンネと違って、私は何度だって記憶をリセット出来るし、消したくない部分は都合よく残して、嫌な記憶だけを質量として食べてしまえるんだから!

だから私は、ずっと楽しい。
だから私はリンネの孤独に、ずっと気付かなかった。



◆ ◆ ◆



「おかしいとは思ってたんだ・・・朝比奈さんの、作戦、面白いけど、そんなに、上手く、いくのかって、つまり、上手く、行きすぎるって、思って、違和感が、あったんだ。よ。」

「そうね。」

黒い本を片手に、泣笠は相槌を打つ。

「最初は葉継が“ブック・オブ・ザ・ワールド”で先読みしてると思ってたけれど・・・もっと、シンプルな、結論が、あった。な。ボクと、したことが、忘れていた。不覚。」

「タスクフォース本部長を、鳥月風花を殺したの?」

「うん。」


鳥月風花の“神の一手”(アンサー)は、“運の否定”と対になるような能力だ。
デッキの並びも含めて、常に最善の状況を作り出す。勝ち筋があるなら必ず勝つ。

それだけでも恐るべき力と言っていいが、竜堂神邪によって虚数化されたことにより、飛躍的に汎用性が増した。
すなわち、自分のみならず認識範囲のデュエル全てに作用する。


「“ブック・オブ・ザ・ワールド”に頼らなくてもタスクフォースなら人海戦術で連絡できるし・・・そもそも、デッキの、構築段階から、敵味方を、問わず、干渉する。

アルドはデッキを右手で取って眺めた。
およそマトモに組んだとは言い難い、“デッキ”というより“カードの束”。

「虚しいものだね葉継・・・カードを、必要と、しない、デュエル、なんて、さ。」

「それがカードゲームの行き着く先よ。私にはカノンの気持ちが少し分かる・・・いいえ、この期に及んで欺瞞など口にしない、私はカノンの気持ちがよく分かる。リンネと同じ立場なら、私だって同じことをするわ。」

ぐにゃりと歪んだ泣笠は、恋人たる決闘者、淵乃井斑の姿になった。
魂の繋がった2人は、切っても切れない関係。

「それで、これからどうしますの?」
「マサキの・・・いや、アルドさんに従うヨ。」

その問いに、アルドは笑って言った。

「答えは既に昔からとっくに決まっている・・・ボクは、世界を、滅ぼす。よ。」





「だったら永遠会長、俺が止めてやる。」


瓦礫を踏みしめる音がする。

アルドは久々に目を見開いた。


「濃海どうして来たの今更・・・それと、余計な、オプションが、付いてる、ようだけど。」

醜い瘤のような筋肉の塊の隣には、人間の男としての完成系のような美。
人間にして、人間もどき、元カンサーS級、間山月人。

「俺が畦地を連れてきた。俺からも尋ねよう、なぜ世界を滅ぼそうとする?」

「実際ホントまじで確定で余計なオプションだ・・・それ、質問じゃ、ないよ。ね。ボクを、否定、する為の、トリガーに、過ぎない。だから、答える、必要も、ない。」

「いや、永遠会長、答えてくれ!」

畦地濃海に言われて、アルドは困ったような顔で肩を竦めた。

「経験してない痛みは分からないって話だよ・・・それは別に、僕が、とりわけ、他人の、痛みを、分かってるって、話では、まるで、ぜんぜん、ない。他人の痛み、なんて、わからない。な。」

「会長・・・・・・」

「こうしてボクが説明しても君には絶対わからない・・・そこの、おじさんは、わかろうとも、しない。」

「本当にそうか? 誰にも分からないと心を閉ざし、こんな世界でも必死で生きようと頑張っている人々から目を逸らし、身勝手な破壊活動をするというなら、この俺が許さん!」

間山月人のデッキが輝き、地表に平面のドラゴンが映し出される。


「永久に交わらぬ平行線、無限の先で良く結ばれる! 地平の虚無、平面より現れろ、分け隔て無き鵺の竜!」


次元竜パラデュール レベル12 無属性・ドラゴン族
攻撃力???? 守備力????
通常召喚できない。任意のタイミングで手札を全て捨てることでのみ、あらゆる場所から特殊召喚する。
このカードの攻撃力・守備力・効果は、特殊召喚時に捨てた手札の合計となる。


「どうだ、ワガママ娘、二次元を切り裂くことは出来るか? 二次元だけではない、三次元を超えた先を知れ、まだまだ世界は絶望に程遠いことを知れ、出でよ《次元竜スパイラ・ニイラ》!!」


次元竜スパイラ・ニイラ レベル11 闇属性・ドラゴン・魔法使い・悪魔族
攻撃力4000 守備力4000
通常召喚できない。任意のタイミングで手札を全て捨てることでのみ、あらゆる場所から特殊召喚する。
(1):このカードは相手のカードの効果を受けない。
(2):相手のライフポイントの上限は4000になる。
(3):相手は魔法・罠を、1ターンに1枚までしか発動・セットできない。
(4):相手の特殊召喚したモンスターは攻撃できず、効果も無効になる。
(5):このカードがフィールド・墓地に存在する限り、自分は魔法カードの効果でダメージを受けない。










「邪魔だ死ねゴミ」





次元  ラデュール レベル12   性・ドラゴン族
攻撃  ??? 守備力???
通常召 できない。任意のタイミ  で手札を全て捨てることで   あらゆる場所から特殊召喚する。
このカー の攻撃力・守備力・効  、特殊召喚時に捨てた手  合計となる。

次元竜ス イラ・ニイラ レベル1  闇属性・ドラゴン・魔法使  悪魔族
攻撃力4  0 守備力4000
通常召喚 きない。任意のタイ  グで手札を全て捨てるこ  のみ、あらゆる場所から特殊召喚する。
(1):この ードは相手のカード 効果を受けない。
(2):相手 ライフポイントの上 は4000になる。
(3):相手 魔法・罠を、1ター に1枚までしか発動・セッ  きない。
(4):相手 特殊召喚したモン ターは攻撃できず、効果  効になる。
(5):この ードがフィールド・ 地に存在する限り、自分  法カードの効果でダメージを受けない。



次元竜が切り裂かれると、間山も。

呆気なく、その場に肉片を散らかした。

呆気なく、死んだ。


「悲しいほどに浮いていたね・・・強さも、言葉も、魂も。ボクの、“ノットワールド”は、擬似“回帰の力”だ。次元の、違いなんて、問題じゃ、ない。な。」

「永遠会長っ!」

「うん・・・そう、ボクは今、濃海と話を、してるんだ、から、ね。」

笑みを浮かべて、アルドは言った。
よく知っているはずの笑みなのに、知らない笑み。

「・・・否定は、しない。だから教えてくれ。なぜ世界を滅ぼそうとする?」

「理由は色々あるよ・・・心優しい、人から、順番に、傷ついて、壊れて、いく、世界、無神経な、ゴミが、のうのうと、生き続けて、何度でも、無神経を、撒き散らす、世界。渦宮さんの言ったことも、間山の言ったことも、それなりには、当てはまるし、付け加えるなら、君がボクに、振り向いてくれない、ってのも、ある。」

「・・・っ、俺のせい、なのか?」

「まさか。」

アルドは即座に否定した。

「今のは単なる前フリで実際どうでもいい枝葉に過ぎないよ濃海・・・本当は、とても、単純な、理由なんだ、馬鹿馬鹿しい、くらいに、シンプルで、わかりやすい。君も、決闘者なら、考えたことは、あるはずだ。よ―――


世界を滅ぼす方法を。


実行するかどうかは別としても強者に立ち向かうのは決闘者の本能みたいなものだし結局つまり渦宮さんも何だかんだ言って世界に挑むポジティブな気持ちで戦っていたと思うんだ・・・ボクには、彼女の、痛み、なんて、わからないし、好きに解釈、するし、本能に忠実に、生きてやる。」

どろりと溢れ出る狂気。
だが、この程度は高校時代から慣れっこだ。
短い間でも、ずっと傍に居た。

「・・・だったら、倒すべき相手は、月島カノンじゃないのか? 悪魔のゲームに乗っかって、世界を滅ぼしにかかるのは、決闘者の本能じゃない。・・・いや、否定しないって約束だったな。すまない。」

「何を言ってるのかな濃海・・・君は、約束を、守ってる。よ。」

「うん・・・?」


「だって最初からボクそう言ってるんだけど?」


「・・・どういう意味だ?」

いまいち話が見えない。
何かを聞き逃していただろうか。

「人類が全滅した程度で地球が粉々になった程度で全ての生物が死に絶えた程度で世界を滅ぼしたことになると本気で思っているわけじゃないよね・・・だって、この、世界は、カノンの、創った、悪魔の、世界だから、宇宙ごと、消えて、無くなった、ところで、指先ひとつで、再生できる。濃海、濃海、ボクらの戦いは、君が思ってる以上に、遥かに、すごく、凄まじく、絶望も生温い、状況だって、わかってるのかな?な?な?」

「・・・・・・・・・」

畦地濃海は言葉が継げなかった。

言われてみれば当然の理屈。
カノンにとっては、この宇宙が滅びたところで、チェス盤の駒が落ちた程度の話。
元通りに並べ直すも、新しい対局を始めるも、彼女の思うがままだ。
それの何が、滅んでいるというのだ?

「濃海・・・ボクらは所詮、偽物だ、紛い物だ、人形芝居の、喜劇役者だ、神と悪魔の、チェスの駒だ。悲観じゃない、偽物だからこそ、ボクらは、戦える。紛い物だからこそ、本物を目指す、気持ちは、本物にだって、負けや、しない。憐れな、お人形さんだから、こそ、前向きな、意味で、世界を、ゾークを滅ぼす!!

「永遠会長、あんた最初から・・・」

「たりめぇだろ。」

大河柾の姿で、返事が返ってきた。

「色々ごちゃついて、散々遠回りしちまったが、話は最初からシンプルだ。カノンを倒せば全てが終わる。

彼は、すうっと息を吸って、ひといきに告げた。



「出てこいやァ、カノン!! 不肖の息子がテメェを、ぶっ殺しに来てやったぜぇえええ!!?」



叫びが響いてから数秒後、キャミソール姿の少女が、金の糸を揺らして降り立った。

「みゃはは、なんて下品な息子だ。そんな子に育てた覚えはにゃいよ? 育ててないけど♪」

「生チチとマンコちらっちら見せてる変態淑女に言われたくねー。それよりシンヤはどうした? ゲームが決着してねえってことは、まだ生きてるはずだ。“ブック・オブ・ザ・ワールド”で読んだ限りでは、とてもシンヤが死んだとは思えねえ。肉片を散らかした程度じゃ、あいつは死なねえんだ。」

「みゅふふ、そうだなァ・・・どこから話を、しようかな?」



悪魔は語り始めた。






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