決闘祭!   最終章あとがき

気分は爽快だった。

私は、今すぐ書き出したいという気持ちを無理やり抑え込み、焦燥で破裂しそうな心を必死になだめた。そうやって辛うじて落ち着きを保ちながら、頭に浮かんだ3通りのシナリオに目を通す。

それは悲惨な歓喜だった。
それは苦渋の選択だった。
それは悦楽の世界だった。

数日ほど思案して、すぐに次の行動に移した―――



小説を書いてみるつもりはないか?
そんな風な問いかけがされたのは、頭が壊れてから半年ほどしてからのことだっただろうか。
問いかけをしてきたのは、他でもなく自分自身だった。ひっきりなしに降りかかる悪想念に、心を殺されまいとする足掻きだったと思う。
それが、私がアマチュア作家の世界へ足を踏み入れたきっかけだった。

私にとって、執筆とは逃避だった。
私にとって、執筆とは治療だった。
私にとって、執筆とは代謝だった。

正直、最初は苦しかった。当然だ。三度の飯よりも、漫画や小説を読む方が好きだった自分が、しかも精神疾患で凡人以下に成り下がった自分が、よりによって書く側へ回ったのだ。つらくて、苦しくて、なかなか生活が安定しなかった。

私は、ひたすら足掻いた。全然文章が書けないのに、とにかく書いて前に進む――、まさに“足掻き”としか言いようのない毎日。書いては消して、書いては消して、行きつ戻りつ、全身から止め処も無く体液を流し、思考過程が限りなくウミウシに近い、孤独のクルーズ。

正直ちっとも楽しくない。それでも生きる為に、やらざるを得なかった。書くのをやめると、呼吸が止まるのだ。比喩ではない。書かずに数日が経過すると、自動的に呼吸困難に陥ってしまうのだ!
検証の結果、それは残念ながら真実であり、そして約3日が期限であることも突き止めた。私の生態は、人類のそれに、質的に劣っていた。脳回路が、執筆とパニック発作を、繋げてしまっていたのだ。


だが、あるとき。
執筆が楽しい、と私は思ったのだ。

そう思ってすぐに、馬鹿げていると思った。そんなはずはない。私は呼吸と代謝をしているだけだ。この苦しみに偽りはない。執筆は苦しい。苦しい。苦しい。苦しい! 苦しい!
必死にそう考えて、自分の中に湧いてきた浮かれた考えを粉々にしてやろうと躍起になった。

だが、その行為が既に、私が私自身を偽っているということを如実に物語っていた。私はいつの間にか、執筆を楽しんでいたのだ。
何故だ? 私は読む方が大好きな人間だったはずだ。これまでも今も、私は読書を楽しんできたじゃないか。読む方がずっと楽で楽しい。一体いつから私は、書く方も楽しめるようになってしまったんだ? 何故だ!?


悦楽の正体。
それは自分が被虐趣味であることに他ならなかった。

誰かに苛まれるのでは満足できない。
自分で自分を苛み、排泄物を主食として、心の永久機関は駆動を始めていた。それは私の想像を遥かに超えて、迷走し、暴走し、怪物となって私を操り人形にしてしまった。

衝動に支配され、身を任せる安心!
そう、私は自分の書いたものを、“読者として”読めるようになっていたのだった。

気分は、爽快だった。


それは、乖離の始まりでもあった。
それは、別離の始まりでもあった。

“呼吸をするように文章を書く”―――これは自慢であり自虐であるが、そうした私自身の感想を差し引くならば、単純に“執筆が早い”ことを意味する。

執筆の速度で考えるならば、むしろ遅い方だ。未だにキーボードは単指押しを続けているし、ノートや画面に向かい合っても、ぼんやりしていることが多い。次々と新作を発表していく仲間たちを、怨めしげに眺めていたものだ。

しかし、執筆の“頻度”に限って言えば、おそらく仲間内で最高かもしれない―――そう思えるようになってきた頃には、原作HPは衰退の時期にあった。
焦った私は、かつての活気を取り戻すことが、自分の使命であり、恩返しであると考え、がむしゃらに執筆し、小説を発表した。

今になって思えば、それが衰退を加速させる一因になった―――いや、一因どころか主犯に近いかもしれない。
私の書いたものは、他の作家と比べて、決して優れた内実を持ってはいなかった。だが、量が多かった。この“物量”というやつは、どうしてか人の気持ちを挫くらしい―――それは私も例外ではない。


誰が悪いかと言えば、それぞれ具体的な事例は思い浮かぶが、事の本質は、「執筆しなければ死ぬ者」と「執筆しなくても生きていける者」との違いであると思う。

これによる意識の差異は、早くから―――それこそ、原作HPに寄りつくよりも前、ブログを始めるよりも前から感じていたものであり、手をこまねいている間に顕在化していった。

もはや執筆は自分の生命に食い込んでいる。特に高尚な話ではない。アルコール依存症の患者が、酒なしでは不安や幻覚に苛まれるようなものだ。
良質な脳内麻薬を補給し続けなければ、自分を保てない。良くも悪くも、そういう生物になっていた。

竜堂神邪や月島カノンは、そうした流れの中で生み出されたキャラクターだと言える。





・・・というわけで、長く続いた「決闘祭!」も、これにて完結です。

「決闘都市」から数えると、原作「遊☆戯☆王」と同じくらいの時期を過ごしてきたわけですが、感慨深いかというと、少し違う感じです。
何年も前に思いついて、何度も反芻してきた展開なので、いざ書く段になると、色々しくじった面はありました。
何を言っても言い訳になりますが、ブログの仕様が変わったり、低気圧の集中ラッシュを喰らったりして、コンディションが劣悪だったのが響いたのは否めないでしょう。

とはいえ、いちおう着地できた、作家として恥ずかしくない程度には、締め括ることが出来たと自負しています。満足できなくても、納得いくまで書くことが出来ました。
変に燃え尽き症候群に陥ることもなく、触発されるような作品に触れたりもして、まだまだ意欲に塗れている現状であります。

子供の頃、「花咲ける青少年」12巻末の、作者あとがきを読んだときは、なんて薄情な作者だと胸が痛んだりもしましたが、今になってみれば、それを良い意味で捉えることの出来ている私がいます。
決闘都市シリーズは完結しましたが、キャラクターたちは、それぞれの未来を歩んでいきます。



神邪 「うん、無理やりイイハナシで締めようとしているのが見え見えだよね。」

マサキ 「やめたげて差し上げろ。・・・それに、そんなイイハナシばかりでもねぇんだけど。」

神邪 「当初の予定では、黎川師匠や鷹野さんの出番もたっぷりあったし、薫さんや十代さんが重要な役割を担うとか、マサキが拳で宇宙数十個を消し飛ばすとか、色々あったのに、まったく申し訳ない。」

マサキ 「待って、俺なにやってんの?」

神邪 「黎川師匠が貧乳爆裂疾風弾ゴレンダァする展開もカットされてしまった・・・。」

マサキ 「それはカットして正解だった。」

神邪 「さっさと折り畳んでおけば良かったのに、あちこち浮気して風呂敷を広げて、その挙句に作家仲間が何人も欠けた状態で最終回を迎えるとか、アホな作者めが!」

マサキ 「お前ホント今日は辛辣だな。」

神邪 「冒頭の長文だって、ほとんどパクリの寄せ集めだよね? 自分の言葉ってものが無いのかなァ?」

マサキ 「パロディのコラボレーションと言ってやれ。」

神邪 「内容も、どこまで本当か分かったもんじゃない。まァ、あとがきは作者の素を語るものではなくて、それ自体が創作物だって葉継も言ってるけどね。」

マサキ 「パロディ効果だな。」

神邪 「というか闇星の続きまだ?」

マサキ 「それは俺も気になっているが・・・」

神邪 「予定外ってのは、ほとんど予後不良と同義語だよね。思い通りにいかない人生なんて、面白くもなんともない。」

マサキ 「寂しいもんだな、時代の流れってやつは。」

神邪 「それだよマサキ。OCGの推移がある以上、多くのデュエル小説には、旬というものが存在する。まァ、旬は過ぎたが、賞味期限には間に合ったってところかな。」

マサキ 「わかりやすいけど辛辣だな!」

神邪 「まァ、とりあえず完結させておけば、後日談とかリメイクとか、色々やれる余裕も出てくるってものさ。」

マサキ 「後日談が既にヤバい予感で溢れてるんだが・・・。」

神邪 「ハッハッハ、何を言ってるんだい。さては翔武メンバーのエピローグを見逃したようだね。赤く漲る双眸の後まで読むことをオススメするよ。」

マサキ 「翔武メンバーの日常しか出てない時点で、いろいろ察するしかねえ。」

神邪 「それは邪推というものだ。例えば、淵乃井くんと葉継は若くして亡くなるけれど、死ぬ前に淵乃井くんは、脳堂さんとの間に生まれた娘を淫紋でドスケベ美少女ダンサーに育成するという、輝かしい未来が待ち受けている。」

マサキ 「インモラルすぎんだろ! あいつらは何やってんだよ!?」

神邪 「みんなが幸せなら問題ない。はっきり和姦だね。ちなみに名前は聖羅。」

マサキ 「聖なる要素が欠片も無い・・・。」

神邪 「月島さんたちは、『光と闇の姉妹』で描かれている未来像がある。むむたんが邪教祖と化してラスボスを務める予定だけど、どうせみんな分かってるからネタバレにはならないよね?」

マサキ 「衝撃の事実なんだけど!?」

神邪 「そうかなァ。彼ってヒロコちゃんに会うためなら、どんな犠牲でも払おうとする、我妻由乃タイプの人間だと思うけど? 女の子を洗脳陵辱してセックス教団を作ったりしたのは、マサキ的にはセーフなんだ?」

マサキ 「言われてみりゃ、反論の余地なくアウトだな。シンヤの友人やってると、感覚が麻痺して困るぜ。」

神邪 「ああ、そうそう、僕の代わりは平行世界の彼が務めることになったよ。本来あるべき、よく好かれる主人公タイプが、僕の人生を引き継いでくれる。喜ばしいことだ。」

マサキ 「・・・そうか。」

神邪 「枡子くんや、ミゾレさんとも、仲良くやってるみたいだね。」

マサキ 「アルドは、どうなってる?」

神邪 「一時的とはいえ、魂が接着していた関係だけに、気になるかい。」

マサキ 「それだけでなく、高校時代の友人としてな。」

神邪 「死んだよ。」

マサキ 「・・・・・・」

神邪 「あのデュエリスト能力は、自分をも切り刻んだ。万物を溶かし崩す液体は、器も例外じゃない。」

マサキ 「・・・そうか。」

神邪 「意外と驚かないんだなァ。見直したぜ。」

マサキ 「驚くのは、アルドの考えてることを、これっぽっちも分かってねぇ奴だけだ。」

神邪 「だろうね。」

マサキ 「・・・・・・」

神邪 「ちなみに君は、亜依と結婚して、子供は19人生まれる。お盛んだね!」

マサキ 「19人・・・?」

神邪 「だって僕の妹は魔法少女なんだぜ? いつまでも若い妻とお楽しみだなコノー!」

マサキ 「そうだったな。だが、ひとつ訂正させてもらうぜ。」

神邪 「うん?」

マサキ 「なァ、シンヤ。お前が当然のように未来を語るのを、何でツッコミ入れなかったと思う?」

神邪 「・・・・・・」

マサキ 「お前は実際に未来を見てきた。有り得るかもしれない未来をな。」

神邪 「・・・・・・」

マサキ 「おっと訂正箇所を言ってなかったぜ。妹じゃなくて、娘だよな?」

神邪 「・・・ひょっとして僕は、かまをかけられているのかな?」

マサキ 「いいや? 掛け値なしに推理の賜物だぜ。吉井が“十一壱”を掌握できたまではいい。だが、何で“神炎”まで掌握できる? 位置を特定できなけりゃ、“掌握の力”は機能しない。」

マサキ 「見城の“黒幕の力”は、リンネの双眸だ。吉井が真相に辿り着いたのは、世界を俯瞰する見城の話を聞いたのなら、当然の帰結だよな。遅ればせながら俺も、辿り着いたぜ?」

神邪 「・・・・・・」



マサキ 「久々だな、竜堂眸。」










―――決闘帝國―――


闇(ゾーク)へ祈り捧げて 光の中で手を組み
のたうつ無辺の純白(しろ)に 悲しみ呼ばれ
この世の全て恐れて 掴んだ棘に滲む
苦痛の強さ深さが 奏でるKANON

散りばめた夢幻の中 思い出す
弑し神代の 朽ち果つまで

輪廻は 清らな 我が子にセカイ託して
彼方へ 広がる 闇への鍵となろう
緻密な知恵が築いてゆく
優しい光 包まれて
最後を告げる1枚まで
導き斗(たたか)え!


心が繋ぐ ふたりは 鏡に刻むように
光も闇も届かぬ 世界の奴隷(しもべ)
デュエルの為に此の刻も 小指を差し出すでしょう
閉ざした傷を忘れて 無垢なる顔に

底知れぬ黒い霧が 覆う空
光の霧が 街を守る

輪廻は 清らな 我が子にココロ託して
原初の 海へと 向かうは未練なれど
何より決闘(ルール)守りたいと
滅んだ魂(カー)を何度でも
最後に至る1枚まで
迷わず斗(たたか)え!


輪廻は 清らな 我が子にセカイ託して
彼方へ 広がる 闇への鍵となろう
緻密な知恵が築いてゆく
優しい光 包まれて
最後を告げる1枚まで
導き斗(たたか)え!





     ~FIN~





   俺たちの、決闘祭は、終わらねえ!!










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