悪霊アエンと失われた楽園

二項対立の神話、二元論的な世界観は
具体例を挙げるに困ることはない。

例えばゾロアスター教においては
善の神アフラマズダーと悪の神アンリマンユが
対となる存在である。

アンリマンユ、子供時代はアーリマンで覚えたが、
FFのフロータイ上位種と紛らわしいので
(チョコボ解体新書にも書かれている)
アンリマンユで覚え直したのは「もんれす」の影響だ。

アステカ神話における、ケツァルコアトルと
テスカトリポカのライバル関係もまた、
二項対立の要素を持っている。

プテラノドンより大きな翼竜の名前として
子供心に印象的だったものが、
アステカ神話の最高神から名付けられていたと知って
自然と興味が波及していった。


グノーシス主義は、詳細や細かい定義はともかく、
知性が悪であるはずがない、という考え方が
アッキーの性に合っている。

主に「デビルマンレディー」からの知識だが、
楽園を追われたエピソードは確かに怪しい。

永井豪に影響を与えた作家の筆頭は
ダンテ・アリギエーリだと思われるが、
ならびにジョン・ミルトンも外せないところだ。


拝火教には詳しくないが、善悪は
それぞれの神の「選択」であった、という点は興味深い。

唯物論を突き詰めるならば、ポリシーは選択的であり、
(ハナダのジムリーダーが言う「私の」である)
実のところ観念論とは二項対立の関係ではない。

選択の具体性としては、ヒンケルの
「眠れぬ夜の為に」が好みである。
(クインザ・ハフェズが引用しているのもあって)


アステカ神話の善悪対決は
「スプリガン」では素直に描かれているが、
「キューティーハニー天女伝説」では
ケツァルコアトルの善性に疑問が投げかけられている。

神話を読むと、最初の太陽神はテスカトリポカであり、
ケツァルコアトルはテスカトリポカを
棍棒で殴って水の中に落としたというのだ。
なんとも暴力的な善神である。

無論これだけでケツァルコアトルを悪と断ずるのも早計だが、
また別の系統では、更に二柱を加えた
「4人のテスカトリポカ」が創造神となっている。
ケツァルコアトルは「白きテスカトリポカ」であり、
「黒のテスカトリポカ」と合わせて
昼夜のメタファーと考えることも出来る。

「スプリガン」で指摘された、代理戦争としての要素は
「遊戯王5Ds」のシグナー対ダークシグナーに
引き継がれて描かれることになった。
そして漫画版では赤き龍が邪神として描かれ、
逆転性のカタルシスを味合わせてもらった。



・・・さて、ようやく「マッドメン」の話になるが、
大いなる仮面と悪霊アエンの対立構造もまた
引っくり返して考えることも可能であろう。

なんてったって諸星大二郎だ。
「暗黒神話」における弥勒菩薩の解釈は、
皮肉めいていて、かつ前向きな面白さがある。

「まんが世界ふしぎ物語」10巻で、
そんな先まで人類が生きているかと
カオリとマミーが疑問を抱くシーンがあるが、
そんな先まで人類が生きていないからこそ、
暗黒神が顕現しても人類を死に至らしめることはない、
というのが「暗黒神話」のラストであった。


大いなる仮面は、自然と調和する善性を以って描かれ、
尊重すべき伝統文化の守り神として
まずは受け止められる。
ペイ・バックの正当性も含めて、
厳しくも優しい神、という印象だ。

しかし中盤で、神話とは機構に過ぎない、という話を
大いなる仮面が語り始める。
そして終盤では、コドワを入れ墨の台として扱い、
人類を輪の中に縛る悪性が明かされていく。

それまでの善性が偽りというわけでもない。
無垢なままで生涯を終えるなら、
それはそれで幸せなことであると思う。
だが、ひとたび知性を獲得した者を
元に戻そうとするのは話が別だ。

「バナナ」を選んだ者が「石」を選び直せば、
どのようになるかは「暗黒神話」で
大神美弥が体現している。


アエンは基本的に悪性を色濃く描かれ、
文明という怪物のメタファーとして、
自然の破壊者としての側面を印象付けていた。

しかし同時に、知識や豊かさを齎したのだ、
という主張には耳を傾けたいものだ。
むしろアエン自体よりも、
異文化を侵略する有象無象の人々こそが
アエンの悪性に特化した存在である。

すなわち大いなる仮面も悪霊アエンも、
それぞれに善性と悪性を持っており、
ナミコが大いなる仮面の善性を継いだのと同様に、
コドワはアエンの善性を以って輪を破ったのだ。


「マッドメン」のラストは
前向きに描かれた失楽園である、と見ることが出来る。

知性を獲得したから楽園を追われたのではなく、
愚者の楽園は知者には住みにくいから、
みずから出ていった、と捉えるのは自然な発想だ。

あるいは神が真に善なる存在であるならば、
追い立てたのではなく、送り出したのかもしれない。






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