テーマ:エスパー奇譚 短編

クラメーションあるいは蔵目翔 6

彼が目を覚ましたとき、既に日が暮れていた。 しかし驚いたのは、その点ではない。柔らかい毛布が彼を包んでいた。それは今まで味わったことがない感触。 「んっくう・・・」 彼は快感で身悶えした。 今の気持ちを何と表現したらいいのかわからなかった。 「あう・・・。」 泣きたいような気分で周りを見渡すと、自分が部屋の中にいることに気が…
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クラメーションあるいは蔵目翔 5

ふと彼は奇妙な女を見つけた。その女は周囲の連中と違い、逃げ惑うことも叫ぶこともなく、車道の真ん中に立っていた。黒い長袖のシャツに、黒いパンタロン。長い黒髪。 顔も手も皺だらけだが、スラリとした体つきと矍鑠とした姿勢は若々しく、80代とも20代とも思えた。 「敵だ!」 どうしてそう思ったかはわからない。 彼は咄嗟に空間干渉で攻撃し…
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クラメーションあるいは蔵目翔 4

彼は悲しくなかった。母を殺したという、自責の念に苦しめられることもなかった。 母親のことを憎んでいたわけでもないし、鬱陶しく思っていたわけでもない。母親を苦痛から解放できて良かったと思うだけだ。家事労働で母親の負担を軽減するのと同じ感覚だった。 薬代を稼いだのが無駄だったとは思っていない。体を売る苦痛や嫌悪感を、母親への恨みに変える…
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クラメーションあるいは蔵目翔 3

やがて10歳になり、精通が始まった。彼は女たちの欲望を、更に満たせる体になったのだ。 彼は自分の体をプロデュースした。品の無い言い方をすれば、“タダではヤらせない”ということだ。好き勝手に犯されてきた今までよりは事態が改善したし、少なくとも彼は感じていた。男を相手にするよりは、女を相手にする方が、幾分か苦痛が少なかった。対価として、僅…
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クラメーションあるいは蔵目翔 2

生きる。生存する。生き延びる。それだけのことが、何故こんなにも難しいのだろう。 それは肉体だけでなく精神も栄養を必要とするからだ。よしんば心を閉ざして―――その閉ざし方は様々であるけれども―――肉体の生存のみに特化したとしても、生き延びるのが難しい街。それが石泥第三区である。 後にクラメーションあるいは蔵目翔の名を得る彼も、誰かの気…
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クラメーションあるいは蔵目翔 1

後に“X・クラメーション”あるいは“蔵目翔”と呼ばれる男の話だが、彼は生まれたときから10年以上も名前が無かった。親から名前を貰えなかったのだ。 母親からは「おい」とか「お前」とか呼ばれていて、それで事足りた。 父親は誰ともわからず、街の男たちを父親と見立てて育った。 街の人々は彼を好きな名で呼んだ。「チビ」とか「ポチ」とか、まる…
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殺戮の命令者   解説

6年くらい前に書いたもの。公開するかどうか割と本気で迷ったけど、結局は公開する作家の性。 私自身が読んでも、随分と病んでるなァと思うあたり、逆に言えば今は精神病の症状も改善しているのかも。 ・・・などと言いつつ、「酷死病の少年」とか「ミッドナイトワールド」とか見る分には、むしろ悪化してるみたい。 「決闘の箱」や「決闘迷宮」とか、こ…
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殺戮の命令者 5

終わりの時が近づいてきた。「G」は肉体を気遣わない。自身の能力で強化されているとはいえ、休み無く酷使したら破綻は来る。精神は一刻も早く対象全員の抹殺を望んでいるので、動く限りは肉体を酷使する。 休み無く酷使することで、肉体は表面からひび割れて血が滲んでくる。骨はみしみしと音を立てて、筋肉も時々嫌な音を立てる。医学的には限界だが、精神力…
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殺戮の命令者 4

吸収した想念があまりに多いので、対象者もそれだけ多い。「G」が殺すべき人間はまだまだ存在していた。 今回のような状態は極上のカタルシスを与えてくれるが、デメリットも多い。あくまで人間の体を使っている以上、肉体的疲労からは逃れられない。しかし精神は全く疲労しないので、そこに齟齬が生じる。 殺せ!          殺せ!     …
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殺戮の命令者 3

ぐしぐしと手で押しつぶしたり、足を使って踏みつぶしたり、その場で考えられる限りの手段を使って対象を粉々にしていく。血液は型の違いなど細かいことを除けば全ての人間が同じものを持っている。しかし、このときばかりは感覚が異なる。対象者の血液は、普通の人間の血液よりも汚らしいという感覚になる。 血液だけではない。生命を失った以上は単なる物体に…
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殺戮の命令者 2

普段の「G」は、殺戮を楽しんでいる。怒りに満ちた今の状態でも楽しんでいることには変わらないが、同じ「楽」という字を使っていても内容は違う。 普段は殺戮そのものが楽しい。肉を引き裂き、臓腑をえぐり出し、骨を砕く。それを行うことが楽しい。遊びには2種類あるが、楽しむための遊び。それが普段の「G」の行動である。 もう1つ、ストレスを解消す…
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殺戮の命令者 1

その物体を支配していたのは、怒り。 「物体」という表現を使うのは、人物像を表記する意味が無いから。 或いは「人間」と表記するべきかもしれないが、正確には人間でもない。 なので「物体」と表記した。 後に付けられる名前にちなんで、それを「G」と呼ぶことにする。 「G」は深層意識まで覗ける強力きわまりないテレパシー能力を持つ。それ故…
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殺戮の命令者 プロローグ

殺せ殺せ殺せ! 死ね死ね死ね! 殺してやる殺してやるクズ共めゴミ共が憎い憎い狂うゴミがクズがクズがクズがクズがぁっ!! 殺せ殺せ殺せ! 死ね死ね死ね! ゴミ共がクズがゴミゴミゴミ殺してやる助けて助けて汚れるぴしぴしぴしっぴしぴしぴしっ!! 殺せ殺せ殺せ! 死ね死ね死ね! 塗り潰す塗り潰すゴミを塗り潰すゴミがゴミがゴミが死…
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ピルネクス

「ぽぉいずん」 どうして自分は男に生まれなかったのだろうと、今更ながら思う。 男に生まれていたら、まだ、「まし」だったはずだ。 「ポォイズン」 人には、賞味期限がある。 若いうちにしかない輝きというものが、どうしようもなく現実として存在する。 その若さが衰えるペースは個人差があり、「特別な人間」は常識に関係な…
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ある薬売りの褪せた色

自分が生まれて、どれだけ経っただろうかと、薬売りの老婆は思った。 何があったわけでもない。ふと思ったのだ。 「戦後も遠くなりにけり・・・。」 しわがれた声で、鬼灯乙女(ほおずき・おとめ)は201号室の寝床に腰掛けていた。 名前通りの乙女だった頃、日本は戦争の真っ只中。赤き唇は誰に奪われることもなく、時は過ぎていった。 戦後すぐ…
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「再生の少女」他2作 あとがき

◆ ◆ ◆ 久々の掌編で、以前に書いたものと比べると随分と作風が変わっているような、そうでもないような。 「4号室の少年」あたりから、同じ作風になっているかな・・・? それぞれ独立した話ですが、共通テーマとして“超能力の意義”や“超能力と幸せ”があります。 どの話も、“正しい”と言えるようなものではないと思ってい…
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俺は無残に死ぬ

だいたい超能力なんてものはロクでもない。特に予知能力は最低だ。 俺自身が予知能力者で、無惨な死を迎えることを予知してしまったのだから。 それの具体的な内容を知っていれば、まだ対策も立てられるのに。無惨に死ぬという事実だけ予知してしまっている。どうやら能力が弱いかだとか。 しかしまあ、もっと強い能力を持っていても、それはそれで酷い目…
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知っていた女

あいつから校舎裏に呼び出された。用件はわかっていた。 いつになく真剣な顔して、あいつは言った。 「好きです、付き合ってください!」 「そう言ってくれるのを待ってたわ。」 君があたしのことを好きだって知ってたよ。 はじめて会ったときのこと、忘れてない。忘れない。 あたしが小学校4年生のとき、スカートをめくってきた奴。 「…
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再生の少女

腕が生えてくる。足も生えてくる。 正確には、生えてくるわけじゃないんだけど。 そう、わたしはエスパー。再生能力者。 「ねーえ、あなたってホントに変わってるわよね。」 ソファーに腰掛けながら、わたしは笑みを浮かべて言った。 ちなみにここは、彼の家。 「そうか? 自分では普通だと思ってるよ? ごく普通の好奇心さ。」 彼も笑…
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雨と雲の姉妹 あとがき

気が付けば「悲喜出しの恋」から1年半以上も過ぎての連載。時が経つのは早いものですね。 今回の話は短編にしては登場キャラが多く、前書きで既読推奨作品を列挙しておくべきだったかと反省しております。 新規キャラクターは、レニィとアンドリュー、それから例の5人だけで、他の面々は過去作品で出てきたキャラです。 レニィを中心に話を進めていても…
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雨と雲の姉妹 27

ぽつぽつと降り始めた雨は、瞬くうちにざあざあと勢いを増し、やがて視界を狭めるほどの豪雨となった。 「はああ、これがレニィちゃんの企みか・・・。」 「うろおい、そんな話があったんですか?」 「オレも今思い出したんだよ。確かレニィちゃんの能力って、天候を雨にするやつだろ?」 「そうですよ。リュイさんが雲を呼び寄せる能力、レニィさんが…
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雨と雲の姉妹 26

総合編成が始まり、予備員の中から新たな正規メンバーが選ばれていく。 一応、簡単なテストはあるが、選ぶ側は予備員の実力や性格は知っている。どこの分隊が誰を取るかということについては、あらかじめ大枠は話し合いで決められているのだ。 「はあー、暇だな。」 「そうですねー。」 ラドルとウロイは暇潰しにストレッチや筋肉トレーニングをしなが…
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雨と雲の姉妹 25

そこへ予備員の若者たち数名が通りかかった。 「あいつらか、水組って。」 「なーんか大したことなさそうだな。」 「隊長はそこそこやれそうだけど、ガキが2人もいるってありえねー。編成はお遊戯会じゃないんだぞ?」 「ハハハ、言っちゃ悪いよ。」 連中は失笑しながら去っていった。 思わず殴りかかろうとしたレニィをリュイが止めた。 「…
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雨と雲の姉妹 24

その頃、水組隊長アンドリューにも召集がかかっていた。 「あー、総合編成って今日でした?」 「そうだ。」 砕組第二副隊長カタストロが簡潔に返事をする。 「リュイ、レニィ、来れるか?」 「はい。」 「もちろん!」 わざわざ“来れるか”と訊いたのは、砕組との関係で嫌な思いをするかもしれないぞ、という意味だった。 しかし、リュイ…
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雨と雲の姉妹 23

コムザインとカタストロが被告人の5名を連れて部屋を出て行き、フィリップと夜果里が残った。 「これくらいで被害者たちの屈辱が晴れるとは思わないが・・・まあ、いいだろう。」 「・・・暗殺などしないだろうな?」 「そうね・・・。あたしに阿(おもね)って不当に刑を重くするような小細工をしていたら、そのときは暗殺も選択肢に入ってたかもしれな…
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雨と雲の姉妹 22

裁判が終わり、ラドルとウロイは廊下を歩いていた。 「ラドルさん、自分から給料カットを申し出る為に連中を痛めつけたんで?」 「いやー、その場のノリだよ。カタストロ副隊長の前だと、ついカッコつけちゃうんだよな、オレってば。」 「カッコつけの代償が給料3割カットですか・・・。割に合わないですね。」 「損得ばっか考えてたらノリが悪くなる…
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雨と雲の姉妹 21

「ケストナー副隊長の言い分を聞こう。」 「禁錮と精神チェックはやめてくれ。代わりに24時間態勢で監視する。」 実のところ、これらの報告や求刑内容、弁護内容など、裁判に必要な情報は昨日のうちに砕組内部で検討されていた。この裁判は京狐夜果里に対するパフォーマンスの意味合いが大きい。 「・・・判決を言い渡す。全財産の没収、給与の3年以上…
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雨と雲の姉妹 20

その翌日。 砕組内部で裁判が開かれた。 裁判長にコムザイン、検事席にフィー・カタストロ、その傍らに証人としてラドルとウロイ、被告人は例の5人、その弁護人としてフィリップ・ケストナー、傍聴席では京狐夜果里が見えない目を光らせている。 「裁判を始める。」 コムザインの物言いは簡潔。 その眼光に5人は身が竦む。レニィやリュイに野蛮な…
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雨と雲の姉妹 19

「レニィも・・・ありがとうね。」 2人っきりになってから、おもむろにリュイが言い出した。 「な、何よ急に。」 「あいつらから庇ってくれたとき・・・嬉しかったよ、“お姉ちゃん”。」 リュイは涙ぐんだ笑顔でレニィを見つめた。 「・・・!」 レニィは何だかたまらない気分になった。嬉しいような恥ずかしいような、胸の奥から込み上げてく…
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雨と雲の姉妹 18

もはや5人は歯向かう気力を無くしていた。何かを言うこともなく、怯えた目をして震えていた。 「さてと、行こうかウロイ。2人をアンドリューのところへ送り届けてやらないと。」 「そうですね。」 ウロイはリュイを、ラドルはレニィを、それぞれ背負って歩き出した。 進路に少年の1人が倒れていたが、ウロイが足だけの動きで蹴り飛ばした。 「お…
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2019年11月
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